建設工事の請負契約に契約書は必要か?
請負契約は書面により行わなければならない
建設業法では、建設工事の請負契約の明確性、正確性の担保、建設工事の請負契約の当事者間の紛争発生の防止のため、書面で請負契約を締結することを求めています。
建設業法上、建設業許可を受けている、受けていないにかかわらず建設業を請け負う場合には契約書の交付義務があります。
建設業許可が必要ない小規模な工事だからと言って、契約書が不要というわけではありません。
契約締結の方法
建設業法では、契約の締結に際して建設業法に定められた一定の事項を書面に記載し、建設工事の請負契約の当事者がそれぞれ署名又は記名押印をして相互に書面交付しなければならないとされています。
書面での契約締結の方法には次のものがあります。
(1)請負契約書を交わす方法
(2)基本契約書を交わし、注文書・請書を交換する方法
(3)注文書・請書の交換のみによる方法
1から3いずれの方法もポイントは、一定事項を記載された書面で、署名又は記名押印をし、相互に書面を交付するという点で、守られない場合には建設業法違反となり行政処分の対象となります。
例えば、署名又は記名押印がされていない、注文書のみ交付し請書は交付されないなど相互に書面が交付されないなどは違反となります。
なお、 国土交通省で定められた一定の基準(見読性の確保、原本性の確保)をクリアした電子契約による方も法認められています。
詳細は、国土交通省のホームページ「建設業法施行規則第13条の2第2項に規定する「技術的基準」に係るガイドライン」をご覧ください。
契約書に記載すべき事項
紛争の原因とならないよう、請負契約書等に記載すべき事項として、建設業法第19条第1項に16項目定められています。
第1号 | 工事内容 |
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第2号 | 請負代金の額 |
第3号 | 工事着手の時期及び工事完成の時期 |
第4号 | 工事を施工しない日または時間帯の定めとするときは、その内容 |
第5号 | 請負代金の全部または一部の前払金又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法 |
第6号 | 当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があった場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め |
第7号 | 天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め |
第8号 | 価格等(物価統制令(昭和二十一年勅令第百八号)第二条に指定する価格等をいう。)の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更 |
第9号 | 工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め |
第10号 | 注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め |
第11号 | 注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引き渡しの時期 |
第12号 | 工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法 |
第13号 | 工事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容 |
第14号 | 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金 |
第15号 | 契約に関する紛争の解決方法 |
第16号 | その他国土交通省令で定める事項 |
建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)対象工事の場合は、次の4項目も追加記載が必要です。
(1)分別解体の方法
(2)解体工事に要する費用
(3)再資源化するための施設の名称・所在地
(4)再資源化等に要する費用
これらの項目が全て網羅された請負契約書等で契約を締結しなければなりません。
請負契約の締結方法により、それぞれの書面に記載すべき事項が変わります。
- (1)請負契約書を交わす方法
- 請負契約書に第1号から第16号の項目を記載します。
- (2)基本契約書を交わし、注文書・請書を交換する方法
- 基本契約書に第5号から第16号の項目を記載します。
注文書・請書のそれぞれに第1号おから第4号の項目を記載します。
- 基本契約書に第5号から第16号の項目を記載します。
- (3)注文書・請書の交換のみによる方法
- 注文書・請書のそれぞれに第1号から第16号の項目を記載します。
もしくは、第1号から第4号の項目を記載した注文書・請書のそれぞれに第5号から第16号の項目を記載した約款を添付します。
- 注文書・請書のそれぞれに第1号から第16号の項目を記載します。
一からこれらの項目が記載された請負契約書等を作成することは大変です。
建設業法の基準をクリアした請負契約書が欲しいという場合は、国土交通省の中央建設審議会が作成している建設工事標準請負契約約款などを活用されることをおすすめします。
参考資料
・国土交通省「建設工事標準請負契約約款」
注意事項
※この情報は2022.12.16時点の情報です。内容の詳細につきましては、各省庁等関係機関にご確認ください。
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